支援級?それとも普通級?
小学校入学前に大きな決断を迫られ、悩んでいませんか?
普通学級に行かせたいという思いがあったのに、就学相談で支援学級へいくことを勧められた。
普通学級に行かせるのは正直不安だけど、療育の先生や医師には普通学級の方がいいと言われた。
本当に悩ましいですよね。
自分の思いと周りの見解が違ったり、 それぞれの学級の様子が分からないままでは不安が増すばかりです。
普通学級にするか、支援学級にするか。それは、何を基準に、誰が決めると思いますか?
じつは、最終的には保護者の方の意見が尊重されるのです。
子どものことを誰よりも知っているのはお母さんです。だからこそ、保護者の方には支援学級や普通学級のことをしっかりと知って欲しいと思います。
子どもが安心して落ち着いて過ごせる場所、本来持っている能力を最大限のばせる場所。
それが子どもにとって適した場所です。
普通学級、支援学級という学級の名前に縛られず、まずは自分の子どもに合っている環境がどのような環境なのか、考えてみましょう。

普通学級と支援学級は地域・学校・学年によって違いがある

普通学級にも支援学級にもいえることですが、学級の環境や雰囲気は、地域・学校・学年によって大きく異なります。
そのため、支援学級か普通学級かで迷った時は、まず入学予定の学校見学に行ってみましょう。
百聞は一見に如かず。
実際に見学して学校の様子を目で確認し、雰囲気を肌で感じることが大切です。
もちろん、学校は毎年職員の異動や普通学級ではクラス替えがあるため、入学後も全く同じ状況というわけにはいきません。
ただ、支援学級の場合は担任の先生が数年間変わらないということもあります。現在、どのような児童が支援学級に在籍しているか、学年や障害の程度など、大まかなことなら知ることができます。
実際見学するときには、以下のことを中心に見学しましょう。また、可能であれば子ども同伴で行き、見学する時の子どもの状態をみるのもいいかと思います。
- 支援学級・普通学級の教室環境
- 支援学級・普通学級の授業の様子
- 支援学級の児童(休み時間の過ごし方や授業の様子など)
また、見学の際に支援学級の先生や管理職の先生と話す機会をつくってもらいましょう。教育委員会や専門機関の方より、現場の様子は現場にいる先生が一番わかっています。
子どもの障害の特性や園での様子などを伝え、ストレートにどちらの学級がいいのか聞いてみるのもいいかもしれません。学校や先生に何を求めるのか。子どものどのようなことが一番心配なのか。その思いも伝えておきましょう。
発達障害グレーゾーンの子供が普通学級にいくメリットとデメリット

つぎに、一般的な話になってしまいますが、それぞれの学級のメリットやデメリットについてお話しします。
選択肢は以下の3つになるかと思います。
- 普通学級
- 普通学級+通級指導教室
- 支援学級
はじめに、普通学級から説明します。
一年生の普通学級では、1クラスの人数が18人のクラスもあれば、30人を超えるクラスもあります。人数による違いも大きいので、以下のことがすべてあてはまるとは限りませんが、参考にしてください。
普通学級のメリット

協調性が育つ
他の子どもたちとの交流の中で、一緒に学習したり、遊んだり、けんかをしたり、多くの体験を積み重ねることができます。時には思い通りにならないことや、がまんしなくてはいけないこともありますが、そのような中で、周りの子どもたちに合わせることや正しい関わり方を学ぶことができます。
また、普通学級での指示は一斉指導が基本です。たとえ、先生の話を聞き逃したとしても、周りの子どもに合わせて動かなければなりません。周りに目を向け、自分で動くというような力が育ちます。
想いを伝える力が育つ
誰かの助けが必要なときに、助けて欲しいと伝えたり、助けてもらった時に感謝を伝えたりする力も育ちます。
クラスの一員としての自覚がもてる
学校生活では、ほとんどの時間をクラス単位で共有することになります。授業だけでなく、さまざまなイベントを通して、クラスの一員としての自覚が芽生えます。
普通学級のデメリット

小学校入学前の園生活では、支援が必要な状況ではすぐに気づいてもらえますし、マンツーマンで支援の先生がついていてくれることもあったかもしれませんが、小学校ではそのような細かな支援は期待できません。
特に30人を超える学級では厳しいです。
低学年のうちは生活面や学習面で配慮が必要な児童が多いため、支援員などのサポートが入りますが、あくまでもクラス単位、学年単位です。クラスに一人、支援員がつく学校は恵まれていると言えます。
他児童の保護者との関係
保護者の中には、発達障害への理解がない方もいます。たとえば、授業の中断やけんか、支援員の独占状態など、それが障害の特性が原因であったとしても、自分の子どもへの影響を懸念して、厳しいことを言う方もいらっしゃいます。場合によっては保護者間の関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。もちろん、そのような状況は子どもにとって良いことは何もありません。
家族の努力
普通学級での支援には限界があります。きっと子どもはがんばって過ごしていることがほとんどです。学習のフォローが家庭でも必要な場合は、保護者にとっても子どもにとっても、かなりの負担になることが考えられます。また、それ以上に精神面のフォローはとても大切です。家庭で十分に充電させてあげられるだけの心の余裕が、保護者にもなければなりません。家族の努力もかなり必要になります。
発達障害グレーゾーンの子供が通級指導教室にいくメリットとデメリット

つぎに、普通学級に在籍しながら、障害の程度に合わせて別室で特別な指導を定期的に受けられる「通級指導教室」について説明します。
通級指導教室のメリット
子どもに合った指導が受けられる
基本的にはマンツーマンです。発達障害に詳しい先生が個別に指導してくれるので、ひとりひとりに合った指導をしてもらえます。何が苦手なのか、どのような勉強法やトレーニングを取り入れると効果的なのか、具体的な方法が見えてきます。個別指導のため、子どもは落ち着いて取り組むことができます。
成果や学校生活についてこまかく報告が受けられる
また、指導の成果や学校生活についての報告をこまめに受けることができます。
通級指導教室のデメリット
抜けた通常授業の補習がない
週に1~8時間、通級指導教室に通う時間は子どもによって違います。通級指導教室で勉強している時間は普通学級での授業を受けることができません。その抜けた授業のカバーは学校ではできません。家庭でのフォローが必要になります。
送り迎えの負担と時間的ロス
自分の学校に通級指導教室がない場合は、通わなければなりません。その送り迎えは保護者の方の負担となります。また時間のロスも自校に比べれば増えます。(※地域によっては、送り迎えだけをしてもらえる「育児サポート」が受けられる場合があります。有料無料も地域により差があります。)
本人の通級への葛藤と周りの偏見
年齢が上がると、通級指導教室へ通うことを嫌がる子どもがいます。また、周囲からの偏見を受けていじめの原因になることもあります。

通級を利用したいけど、いったい通級指導教室って何を教えてくれるの?どんな子どもが通う場所なの?うちの子は通わせた方がいいのかしら?こんなふうに、さまざまな不安や疑問をお持ちのママに、通級指導教室について分かりやすく解説します!
発達障害グレーゾーンの子供が支援学級にいくメリットとデメリット

支援学級は、地域差、学校差がかなり大きいです。障害の重い子どもが多いという印象を受ける学校もあれば(下図緑矢印)、普通学級でもほとんど問題なくやっていけるのではないか?と思われる子ども、つまりグレーゾーンの子どもが多くいる学校もあります。 (下図青矢印)

支援学級のメリット
少人数で丁寧に指導してもらえる
最大のメリットは1クラスの人数が少人数であること。知的、自閉・情緒、肢体不自由など、障害の種類によってクラスがありますが、上限は1クラス8人です。1人だけという場合もけっこう多いです。(地域にもよりますが…)そのため、普通学級に比べたら断然、先生には丁寧にみてもらえます。
個人に合わせた指導・教科選択
支援学級には「自立」「生活単元」など、普通学級にはない教科があり、障害の程度に応じた内容を取り入れてもらえます。他校の支援学級との交流を積極的に取り入れている地域もあり、楽しいイベントも多くあります。
また、通常学級への転籍を考えている場合や、障害の程度が軽い場合は、年間授業時数の半分以下という条件はつきますが、普通学級で授業を受ける教科を決めることができます。
発達障害があることを分かってもらいやすい
支援学級に在籍している場合は、発達障害などの見えにくい障害があるということを周りの人たちに理解してもらいやすいです。「支援学級の子ども」という偏見をもたれるのが嫌と言われる方が時々いらっしゃいますが、見えにくい障害や特性があることを他児童が理解しやすくなります。「支援学級の子ども」だからこそ守れることもあるのです。実際、周りに理解されづらい障害の特性が原因で、普通学級では「いじめ」に発展することがありますが、それを防ぐことができるのです。
支援学級のデメリット

先生・他児童との相性
支援学級の担任の先生は、必ずしも毎年変わるとは限りません。数年間同じという場合もあります。支援学級の児童のメンバーは数年間同じということが多いでしょう。そのため、先生との相性や他児童との相性が悪いと苦しいです。
また、支援学級に一人という場合もあります。そのような場合、ゆったりとした環境で手厚い支援を受けることができますが、担任の先生に依存してしまう(甘えてしまう)ことも考えられます。
逆に、クラスに複数人の児童がいる場合、学年や障害の症状もさまざまなので、先生が細かく対応できないことも十分に考えられます。自分の子どもが入学した数年後、新たにどのような児童が入籍することになるか予測できないため、メンバーによってはクラスの雰囲気が一変することもあります。
普通学級(交流)での疎外感
支援学級に在籍する児童は、年間授業時数の半分以上を支援学級で授業を受けなければならないことになっていますが、発達障害の程度が軽い場合や、将来的に普通学級への転籍も考えているような児童の場合は、普通学級で受ける教科が多くなることがほとんどです。性格にもよりますが、中には普通学級の子どもたちと馴染めず、疎外感を感じてしまう子どももいます。そのような場合、普通学級で過ごす時間を苦しく感じてしまうこともあります。
発達障害グレーゾーンの子供は支援学級でものびる!

普通学級の方が子どもが伸びる。普通学級でも支援してもらえばやっていけるはず。将来のことを考えて支援学級に入れたくない。支援学級にいくことを他の家族が認めない。
さまざまな思いや家庭の事情があって、「どうしても支援学級にいれたくない」という思いをもたれる方がいらっしゃいます。
悩みぬいて、子どものことを思っての決断でしょうから、その思いを否定する気持ちはまったくありません。
地域や世代によっては、支援学級に偏見を持たれている方がいるのも事実なので…。
でも、わたしが教育現場で働いていた時、明らかに普通学級という環境では厳しいお子さんや、支援学級に入ればすごく伸びるだろうなと思うお子さんを見ていると、もったいない…と感じることが多くありました。
そのような子どもにとって、普通学級が必ずしもいい環境とは言えません。
なんとか普通学級でがんばって欲しい。普通学級にいかせたい。
その思いは、分かります。
でも、普通学級で厳しい現実に阻まれ、自信を失ったり、安心した居場所を学校に見つけられなかったり…。その環境で6年間過ごすことは、子どもにとって苦しいです。
普通学級と支援学級は、それぞれが別の枠で囲まれているわけではありません。別の世界というわけでもありません。
低学年の時は支援学級に在籍していたけれど、学年が上がるのを機に普通学級に転籍する。逆に、学年があがるにつれて他児童との差が出てきて落ち着かないため、普通学級から支援学級に転籍する。
支援学級か、普通学級か…。今、決断に迷っていたとしても、選択した学級で6年間過ごさなければならないことはないのです。
適した環境を見極めることで、子どもは伸びます。支援学級だから伸びないということは決してありません。
普通学級だけに固執するのではなく柔軟な考え方で子どもにあった環境を見極めることが大切です。
そしてなにより、子どものための選択をして欲しい…と思います。

おわりに

入学したての頃は、どの親も子どものことが心配ですよね。特に、支援学級か普通学級かで迷っていた方にとって、心配がつきることはないのかもしれません。
どちらの学級が子どもに適した環境だったのか。この選択で良かったのか。
実際、学校生活がはじまってみないと分からないことの方が多いです。
入学後
もしかして、うまくいかないこともあるかもしれません…。
ただ、子どもはどの学級であっても、どんな学級であっても必ず成長することができます。
子どもは置かれた環境の中で、精一杯がんばり、伸びる力をもっています。そして、大人が思っている以上に適応する力をもっているのです。
心配する気持ちが大きすぎるあまり、もっとこうして欲しい…。こうあるべき…。
学校や先生にさまざまな思いを持たれるかもしれません。
でも、求めるばかりでは前にすすむことができません。
保護者の方には、その時おかれた環境に感謝する気持ちや、子どもは必ず伸びると信じる気持ちを持って欲しいな…と思います。
そして、子どもが安心できる家で、たくさん心の充電をしてあげてくださいね。
ひまわり

普通の子育ての常識が通用しない発達障害グレーゾーンの子育て。そんな子供たちを育てるお母さんは、がんばっていてもうまくいかない子育てに自信を失いがちです。子供以上に、配慮やフォローを必要としているのは、もしかしてお母さんなのかもしれません。お母さんが陥りやすい心理と心が軽くなる方法についてお伝えします。
